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Yahoo がディレクトリ型検索をやめる


Yahoo! JAPAN が、10月より検索結果を、今までのディレクトリ型 (人力カテゴリ分類型) から Google のようなロボット検索を中心に表示するようになります。

割と古くから Yahoo を利用していた私としては感慨深いものがありますが、これは Mac OS X に Spotlight という新しい検索・検索結果表示方法が導入されたのと同じ流れなのかな、なんて思ったります。

CNET Japan - ヤフーの検索結果ページが10月から「Yahoo! SEARCH」に変更

昔のロボット型のインターネット検索は大変でした。ロボット型として「千里眼」「ODIN」「Infoseek」等々がありましたが、引っ掛かった検索結果から本当に必要・有益なものを見つけ出すのが実に一苦労だったのです。ですから Google が出てきたときは、私はその検索結果の利用しやすさに感動し、日本語版の提供前からさっさと乗り換えていました。

被リンク数という単純ですが確実なサイトの評価方法に気づいた Google は、正確に望むものに近い結果を表示してくれたのです。被リンク数を考慮することによって、ロボット型でありながら、人間の下した評価を取り込むことが可能になったわけです。結果に表示されるウェブページの概要も、検索結果に関連する内容をうまく表示するものでした。それまでのロボット型の検索エンジンは、概要は表示されていても実際にリンクを開いてみないと内容がつかめないことが多かったのです。Google の優秀さは明らかで、ロボット型検索エンジンは次々と淘汰が進み、今では Infoseek は生き残っていますが、Google の軍門に下って、Google の検索結果を第一に表示するようになっています。他のロボット型検索も似たようなものです。

そんな Google 登場前の時代は、ロボット型の検索エンジンは前述のように使いにくかったので、カテゴリ別に人力で登録された Yahoo はかなり検索しやすかったのです。ロボット型の検索結果にはゴミが非常に多かったのに比べ、人力でフィルタリングしている Yahoo では検索結果にゴミ情報が出にくかったわけです。

しかし、時代は変わりました。インターネットは急速に普及し、ウェブサイトの数も半端じゃなく増大し、人力ですべてを網羅するのは限界に来ました。始めのうちは割と登録が簡単だった Yahoo は審査が厳しくなって行き、一方で初期に登録された質の高くないサイトはそのまま残っていたり、非常に有益なのに登録されてないサイトも増えてきたのです。Yahoo のディレクトリ型の検索は、もうかなり前から質が下がっていたと思います。もちろん Yahoo もロボット型検索を併用し、買収した Inktomi の検索エンジンを元にした独自の検索エンジンを現在は使っています。その前は Google を使っていました。ただ、優秀な検索エンジンを併用していても、検索語が Yahoo のカテゴリに登録されたものと下手に一致してしまうと、そちらが優先されて表示されるので、かえって望ましくない結果が出る場合が多くなってきていたのです。

そういうわけで、Yahoo が今度の10月にロボット型の検索結果を優先表示するようにするのは遅すぎたくらいですが、独自の検索エンジンが Google に十分対抗できるくらいになるまでに、時間がかかったのだとも言えるでしょう。

扱うウェブページが増えてきてカテゴリ型が破綻し、膨大なウェブページからキーワードによって抽出された検索に移行する。これって何かに似ていませんか?

Mac OS は OS 9 以前から OS X 以降で劇的に変化しました。まぁ、名前は同じですが、全く違う OS です。OS 9 以前の時代は、実世界のメタファーで、ファイルや書類が見たままに表示されることが大事にされていました。同じフォルダは1つしか開けないし、開いてあるファイルやフォルダは、次回開くとまた同じ場所にあります。

OS X からは UNIX ベースのシステムになりました。OS 9 以前の時代とは異なり、ファイルの数も桁違い、ディレクトリの深さも多い。カラム表示が導入され、深い階層やたくさんのファイルを同時に扱うには、以前のフォルダ表示やリスト表示より便利になりました。しかし、同じフォルダが複数のウインドウや表示方法で開けてしまうので、以前からの Mac ユーザの一部には不評でした。このあたりの感覚は、Windows しか使ったことのない人にはわからないでしょう。OS 9 以前の Mac は、実際の机の上と同じように、置いてある書類は、動かさない限り常に同じ場所に同じ見え方で表示されていたのです。

階層が深くなり、書類の数が膨大になってくると以前のその方法では限界が来ます。ユーザの批判にも関わらず、Apple がカラム表示を推進していったのは、ひとえに先を見る目があったかということでしょう。Apple は開発していく側ですから、先を見ざるを得ません。そしてさらにファイルが膨大になり、階層が複雑になっていけば、カラム表示でも破綻することが Apple には見えていたのでしょう。Spotlight の登場は必然の流れだったのです。ちょうど Google が台頭してきたように。

扱う情報量が膨大になってくれば、それを人力で分類していくのには自ずと限界が来ます。ウェブ検索で、Yahoo のカテゴリをたどるより、Google の検索で手っ取り早く結果を探すようになったのと同様に、コンピュータのデスクトップの世界でも、従来のフォルダによる分類中心の世界から、Spotlight のようなメタ検索が徐々に当たり前のことになっていくでしょう。

Spotlight には、スマートフォルダといって、あるデータをキーとして仮想フォルダを作ることができますが、Google でもパーソナライズド検索といって、過去の検索結果を履歴として保存して後から参照できるようにしたり、特定の単語をキーとして、新しく検索結果が加わったときに知らせてくれる Google アラートというサービスが始まっています。

以上、ウェブ検索の世界でのディレクトリ型の終焉に触発されて、Mac OS X Tiger のディレクトリ (フォルダ) による分類から Spotlight によるファイル表示への流れと連想して書いてみました。

12月26日追記:
ちょっと似たような話が「Zopeジャンキー日記」さんにも載っていました。話を進めて、さらに「タグ」についてまで言及しています。

Zopeジャンキー日記 :なぜネットではディレクトリが敗れ、サーチとタグが勝利するのか

ディレクトリは、サーチの前に敗れる

人気を集めながらも、このように問題を抱えていた「ディレクトリ」は、その後「サーチ」の登場によって、その王座を譲り渡すことになった。その代表がもちろんグーグルだ。

「ディレクトリ」は、作成も維持も人力なので、コストがハンパではない。そのうえ、ネットはどんどん変わるので、ちゃんと維持することは事実上無理だろう。さらに、それを見る側も人力のブラウジングで探すのだから、とてもコストが高い。

これに対し「サーチ」は、ロジックやアルゴリズムで、キーワードごとに主要サイトのリストを自動生成する。特にグーグルはそのアルゴリズムが精緻で、見る側が最小の時間的コストで、最大の結果(欲しい情報が見つかる)が得られるよう、工夫されていた。

「サーチ」は「ディレクトリ」に比べて、作る側も、見る側も圧倒的にコストが低く、効果が高い。

「ディレクトリ」が「サーチ」の前に敗れたのは、いま考えると、ほとんど「科学的な必然」に思える。

Posted: 木 - 9月 1, 2005 at 01:15 AM               Hatena Bookmark



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