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最近目にした似非科学


世の中にはびこっている似非科学はいくつもあります。 (筆頭として挙げられるのはマイナスイオン。大手メーカーまで自社製品宣伝に使っているので根拠なく信じている人が多いですが、教育を受けた人ならこんなものを信じてはいけません。参照サイト:疑似科学批評(マイナスイオン批評特集)市民のための環境学ガイドなど) その中で最近目にしたものを・・・。

最近目にしたと言っても、新しいネタではないのですが。

1つめは、水だけで走る自動車の話。「DAYS JAPAN」のバックナンバーを読んでいたら、8月号のきくちゆみさんのコラムに書いてありました。「水だけで走る夢の車」というタイトルで、タイトルを読んだだけでおかしいと感じました。水から水素を作ってそれを燃やすことでエネルギーを得るとの説明ですが、水から水素を作るエネルギーはどうなっているのか。記事の中には水素発生装置というのが出てくるのですが、それに関する説明はありません。水を酸素と水素に分解するには絶対にエネルギーが必要で、そのためにエネルギーを投入し、それを燃やしてまたエネルギーに変えるというのは、無駄でしかありません。学校で化学の授業をまじめに聞いていたらわかることだと思うのですが・・・。案の定、翌月の9月号には、先月号の記事には「説明不十分な箇所があ」り、筆者のきくち氏には再度取材し説明してもらいたい旨の編集長のコメントが載っていました。(「DAYS JAPAN」自体は、戦争報道を中心に日本の大手マスコミが報道しない事実を伝える貴重な雑誌です。)

この記事がなぜおかしいかについては、以下のページが丁寧に説明して下さっていますので、説明が必要な方は参照してみて下さい。

ジャーナリストよ、科学の心を持て

関連の記事としては、NARTOMさんの日記sarutoruさんの日記など参照。


2つめは、炭と塩でする洗濯の話。
前提として覚えておきたいのは、今は「着たら洗う」時代で、昔のように「汚れたら洗う」時代ではないため、洗濯物はそもそもあまり汚れていないことです。そして、汚れには大雑把に言って水溶性のものと油溶性のものがありますが、汗や醤油のシミなど水溶性の汚れは、水で洗うだけで落ちるということです。つまり、実際には炭と塩を使わなくても洗濯物はだいぶきれいになるのです。炭と塩の洗浄効果について、具体的な化学的数値を出して検証しているのを見たことがありませんから、炭と塩が効果があると言っているのは、感覚的な思い込みと、似非科学による怪しげな理由付けです。

まず炭の効果から考えましょう。炭はフィルターとして使われているように微細なものの吸着効果はあります。ただ、大量の洗濯物に対し、しかも繰り返し使われてどの程度効果があるかと言うと、目で見えるほどはっきりした効果は期待できないものと思います。炭の効果で似非科学で説明されるもっともたるものが、「水のクラスター」を小さくする、です。調べていただければわかりますが、マイナスイオン同様、「水のクラスター」という言葉が出てきた時点で似非科学決定です。(参照:水商売ウォッチングの FAQ-1)

塩についても敢えて化学的な説明を試み、塩が水に溶けることによってイオンがわずかに増え、それが洗濯に何らかの効果を示すと考えたとしても、量的にはほとんど意味がないでしょう。このあたり、市民のための環境学ガイド「特別な水、怪しい科学、洗濯談義」に解説があります。排出される塩は塩を分解する微生物が処理してくれる、という説明まで読んだことがありますが、そのような微生物がいるのでしょうか。そのような微生物がいるなら、塩害を防いだり、塩水を淡水化したり、いくらでも有効利用できそうですが・・・。

こうした怪しい科学風味の説明を読んだときに、そのときにははっきりした根拠までわからなかったとしても、怪しいとどこかで感じられることが大事と思います。よく学校での勉強で、化学や数学は実社会では役に立たないからと、捨てにかかる人がいますが、そのための学校教育でしょう。今はネットが活用できる時代ですから、怪しいと思ったことは図書館まで行かなくてもいくらでも調べることができます。感性も大事ですが、理性的に考える力も失わないでほしいものです。

Posted: 月 - 11月 15, 2004 at 02:37 AM               Hatena Bookmark



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